<四季の舎>解説

●住まい方

景観夜景

●ロケーション
 大きな県立公園に面しています。
南に公園の池が広がり、北側は森。
恵まれた環境を存分に生かすことが基本的課題でした。
そして自然との共生。

2階を居間・台所など生活中心スペースとしています。
池を見下ろすテラスは自然と対峙した舞台です。


●景観への対処
 建物の高さとしては、もっと高くできたのですが、
全体のボリュームを押さえることで景観を考慮したわけです。
通し柱の市場寸法で高さを決めたことも理由のひとつ。
屋根まで通った柱が家の構造を固めています。
木造の軸組をシンプルにすることで無駄なく丈夫となるのです。

 家の北(森)側は高度斜線で高さが決まっています。
かりに公園の方が北側でしたら、もっと屋根を見せた形になったでしょうか
南の公園を満喫するために大きなペアガラスで透明感をもたせました。
透けた存在感は自然に馴染んでいると思います。
夜は建物全体が行灯のようになって廻りをほんのり照らします。

 外装の色彩はグレー系でまとめて、風景に邪魔にならないようにしています。
白や黒を含めて、色を使うと背景の緑が台無しになってしまうからです。
現在は手前の樹木も成長し、もっと隠れた状況となっています。

 洗濯物を干す位置も問題です。
2階の手摺りのところに干しているので、常緑の樹木に隠れています。
公園側から洗濯物が見えるのは避けたいところ。


空間のコンセプト
 自然と共存した家づくりを基本としています。
2階に自然とふれあう部屋を設けて、そのテーマは「風と光」
オープンエアーのテラスを大きくとって部屋の延長としています。
テラスが家の中心的存在となっているのです。
1階に水廻りと夢を見る部屋、そのテーマは「水と宙(そら)」
ゆとりとしての茶室も設けました。
どんな形、方法でも「ゆとりの場」を設けると家に深みがでます。


●人も建物と共に成長
 住み始めると建物に愛着も生まれます。
予算もあって思いの全てを実現できてはいませんが、
住みながら鈍重に造り上げています。
建物の方から発破をかけられることもあります。

 テレビ朝日の「渡辺篤史の建物探訪」で取材の20%程度が紹介されました。
番組の最後に渡辺氏が的確なコメントをしてくれました。
ご本人が納得いかなかったのか、3回やりなおしていました。
ぶっつけ本番、それぞれ内容の違うコメントで、さすがでした。
 どの家もほめてくれる番組ですが、話し半分として
採用(3回目)の渡辺氏のコメントをそのまま紹介します。

「 細矢さんのお宅いかがでしたか。ご覧のとおり非常にデザイン性の優れた建物
ですよね。外観そして内部共に細かいディテール部分まで考え抜かれた建物です。
それが積層されて建物全体がですね、とても感受性豊かなんですね。
  家は言ってみれば引越の時に既に完成していると思いがちですけれども、実は
細矢さんはこれで満足していないんですね。これからさらに変化していくというか、
むしろ建物完成は同時に出発であるということをおっしゃってました。
さらにどんな形で変化していきますか楽しみです。
  そして、四季の舎(いえ)と、この建物は名付けられているんですが、まさに大公園が
あります。この四季のうつろいを、この器は感じ取ることができるわけなんですね。 」


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